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CDW2025フィールドワーク調査手法

テーマ:風土から​考える​インフラストラクチャリング

Circular Design Week2025(CDW2025) Day 1〜Day 3では、京都と滋賀を舞台にフィールドワークを実施しました。3日間を通して感覚を研ぎ澄ましたのが「時間」。私たちの日々の思考や行動の多くは現代に浸透する「クロノス時間(時計時間)」に支配されており、それによって生み出される経済価値は近代的なリニア経済を維持してきました。しかしながら、クロノス時間に支配された経済活動は、主観的な時間感覚に基づく多様な営みを切り捨ててきたともいえます。私たちが循環型の経済モデルを実現しようとするとき、こうした価値観の前提を覆す「カイロス時間(主観的で質的な感覚に基づく多元的時間)」に向き合い直すことが重要な試みになるのです。そこで、本フィールドワークでは、クロノス時間から一歩距離を置き、微生物や動植物、地形、建造物、インフラ、機械など、「人間以後」の風土を織りなす無数の存在がもつ多元的な時間と調息(attuning)することが目指されました。

プロセス

Day 1(伏見)では、はじめに「玄関メソドロジー」を体験し、その後伏見をフィールドとしたリサーチとアウトプット(ラピッドメイキング)が行われました。
Day 2では、亀岡チームと長浜チームに分かれ、引き続きDay 1で体感したメソッドをもとにリサーチを行いました。
Day 3では、Day 2で得られた学びを共有したのち、チームでひとつの「感応ブックレット」を制作しました。

「感応」という手法

このフィールドワークでは近代的なクロノス時間(時計時間)から一歩距離を置き、さまざまな関係性の中で立ち上がる多元的時間(カイロス時間)を意識することが目的とされました。そして、この目的に向けて開発された手法が「感応メソッド」です。「感応メソッド」は、日本の儒教の教えである「感応一理」などを参考にしつつ、本プログラムのコラボレーターであるSarah Pink氏が専門とする「ビジュアル/センサリーエスノグラフィー(Visual/ Sensory Ethnography)」と赤間陽子氏の専門である参加型デザインの要素を組み合わせたオリジナルのリサーチ手法です。

「感応」を実践するには、漬物が発酵していくのと同じように、時間をかけて採集・発酵・熟成させていくプロセスが必要です。まずは、「匂いを嗅ぐ」「耳を澄ませる」「味わう」という風に五感を開放したり、心が感じる方向に身を任せて動いてみたりすることで、自分自身の気になったモノを採集していきます。つづいて、実物を拾ったりカメラやノートで記録したりしながら、時間を置き、それをまた振り返ってみます。さらに、それらを周囲の参加者やグループメンバーと共有し、対話を重ねていきます。
このようなプロセスを何度も繰り返しながら、最終的には動画やポストカード、そしてブックレットという形式に収斂させていくプロセスが、今回実験的に試された「感応メソッド」の一連の流れです。 また、Day 1のプログラム冒頭で実施された「玄関メソドロジー」は、この「感応メソッド」を心身に溶け込ませ、カイロス時間への意識をほんの少し向けやすくするための手法として使われます。今回の伏見フィールドワークでは、酒蔵である月桂冠の神事の一つである「お火焚き祭」を体験することで「玄関」をくぐり、心身を切り替えるエクササイズとなりました。

グループワーク

3日間のフィールドワークでは、1組あたり4〜5名のグループが事前に組まれました。グループでは、リサーチを始める前に感応の「切り口」を設定します。Anticipating・Trusting・Caring・Moving・Repeatingの5つから直感的に選び、そのニュアンスや幅広い意味合い、日本語訳などを考えながら、各フィールドで体感するカイロス時間を整理していきました。

一人ひとりが自身の「感応」を引き出すためには、グループ内でメンバー同士がお互いに良い刺激を与え合うことも重要です。今回のフィールドワークでは、Maker・Watcher・Askerという3つの役割が提示され、グループの中で役割を決めておくことで、一人で考えているだけでは感じることができない、気づくことができないことに意識を向けることができます。

今回のCDW2025のフィールドワークのプログラム詳細や感応メソッドの詳細については、当日参加者に配布したResearch Guideに記載されています。関心のある方はぜひご覧ください。

RESEARCH GUIDE (日本語版)

Reflection Notes

今回、初めての試みとしてCDW2025フェローの3名(草野氏・田房氏・平野氏)による企画・設計のもと「Reflection Notes&Generative Archive」という探索的取り組みが行われました。
フィールドワークでは、「カイロス時間」という、参加者一人ひとりの主観や感覚の多元性を重視したトピックを扱い、そのためのアプローチとして感応メソッドを実践しました。それに伴い、それぞれの記録やフィールドワーク後のアーカイブ方法も多元的な方法が可能なのではないか。「Reflection Notes&Generative Archive」は、そんなアイデアから生まれた取り組みです。 AI(NotebookLM)とLINEチャットを用いて、フィールドワークで使えるツールやインタラクションの設計が行われ、実際に3日間のフィールドワークを通して参加者の皆さんに有効に活用されました。この取り組みについては、設計チームによるコラムが書かれていますので、ご関心のある方はご参照ください。

執筆者

岡本晋

一般社団法人monlon